嵐のあとで ~After the Storm~

ライブ参戦の備忘録を中心に徒然と…。

2019.1.26(Sat)村越 弘明 還暦記念 Birthday Live

高校生の頃、初めて出会ったロックンロールの響き。 それまで、日本のフォークと英語の授業で知ったビートルズをほんの少しだけしか聴いたことの無かった田舎娘の私が、初めて知ったロックビートの格好良さに夢中になるのは然程時間がかからなかった。

丁度日本のロックバンドが勢いづいてきていた頃で、音源もライブも沢山見聞き出来る機会があった(…と言っても学生だから資金源は乏しかった)から、勧められたり、気になるものは何でも聴いた。カセットテープに録音・編集する楽しみも覚えた。(昭和ですね…)

そんな中、ふと気がつくと、行き交うそのロックンロールの十字路の真ん中には貴方が立っていた。
その声と詩と音は強烈なgravitationを含んでいて、私を手招きする。
誘われるまま、戸惑いながら近づいた私の腕を掴んで、貴方はスライダーズサウンドの渦中に連れていってくれた。

間もなく「平成」という名の元号が終わろうとしているけれど、「平成」の始まりについて考える時、私の中に介在している一つのバンドがある。

The Street SIiders
「Back to the Street 」Tour
:1989年1月8日@ 名古屋市公会堂

ツアー開始当初のスケジュール通りならば、この日彼らのライブが名古屋で行われるはずだった。

現在みたいに、様々な情報が簡単には掴めないのが当たり前の時代だった。だけど、何となくはわかっていたのだ。ただ漠然と、自分を納得させる為の確信を見つけたくて、会場まで行ってしまったのかも知れない。

最寄りの地下鉄の駅から階段を登り、古めかしい煉瓦色の建物に近づいた時、目に入ったのは「中止」と書かれた一枚の白い紙。
立ちつくす私に 「平成」の始まりは、ほろ苦く小さな傷跡を残した。

結果として、89年3月に同じ会場に公演が振替られた為、初めてライブ会場で彼らの音を体感することが出来た。
(偶然にも、この振替公演日には漫画家の上條敦士さんが来ている。当時、音楽雑誌にツアーの事を上條さん視点で描いたものを連載していた)

そんな中、昨年夏に突如として上記の89年3月ライブのセットリストを書き残した便箋が見つかった。

見つけるまで、私にはこれを書いた記憶が無かった。私は、時折体感したライブのセットリストを書き残すことがある。
(昨年のJOY-POPS@ヒューリックホールの後も、ブログに書きとめていた)
けれど、89年より昔のメモは見当たらないので、多分これが初めて書き残したものだと思う。

セットリストを記した鉛筆書きの小さな文字を見て、マドレーヌと紅茶の香りのように、便箋の中に30年の時を閉じ込められたままの記憶が断片的に、けれど鮮明によみがえる。
「平成」の始まりの小さな傷の瘡蓋は剥がれ、30年後の自分が今また同じ人たちを追いかけていることに微笑みかけてくれたような気がして、不覚にもほんの少し泣いてしまった…。

ハリーの歌声とツインギターのリフ、 FOUR PIECESのバンドサウンドを聴いてから30年が過ぎていた。
改めて言葉にすると自分でも信じられないけれど、平成の終わりを前にして、その人は還暦を迎える。

60歳のバースデーライブには、幸運にもチケットが取れて、お祝いに馳せ参じることが出来た。

登場からして既に笑顔だった。
JOY-POPS@ビルボードライブでも着用したシルバーグレイ基調のジャケット姿で颯爽とギターを手に取り、スタンバイ。

観客からの「ハリー、誕生日おめでとう!」の掛け声には『サンキュー・ダンケシェーン・メルシボク・ありがとう』と洒落っ気たっぷりのレスポンス。

オープニングから、立て続けにハードなキラーチューンと圧倒的なヴォーカル。
盟友・ジェームスさん、ズズさんそしてジミーさんと共に演奏後、
「前半からノリのいいのやるからさ。3分くらいでおわっちゃうから、ノリおくれないようにしてくれよ~」
「ウェルカム~」
なんて陽気なコメントが沢山飛び出して、終始ご機嫌なハリーがそこにいた。

それと、初見かもしれないが、曲間で背を向けているタイミングが少し長めだったことが何度かあった。ハリーがエフェクター操作していたらしいと聞く。
(後日ジェームスさんが「ハリーは新しいことにチャレンジしている」というニュアンスのコメントも…)

何より、ハリーが驚くくらい自然体のパフォーマンスだったのが印象深い。昨年のJOY-POPSの時とはまた違う安心感が有ったのだろうか?
「メンバー紹介するから~」
ジェームスさん、ズズさん、そしてジミーさんが「バンド」として、ハリーとタッグを組んだFOUR PIECESバンドスタイルサウンドの力強さ。
どっしりと重厚なズズさんのドラミングと安定感抜群のジェームスさんのベースライン。ラフに見えてきっちり決めてくるエッジィなジミーさんのサイドギター

ソロナンバー中心のセットリストを予想していたから、スライダーズのナンバーも多数あったのには、少し意外だった。選曲は初期のアルバムから中心にした渋めのセレクト。

良い意味で期待を裏切られてばかりだ。
毎回駄目押しみたいなストレートパンチ。
心地良い痛みに頬が緩みながら、うっすらと霞む視界を振り払う為、大声でその名前を呼び夢中で踊り続けた。

60本の蝋燭が飾られたハリー愛用のギターを型どった特製バースデーケーキ。
会場は「ハリー、誕生日おめでとう!」の波動に包まれて誰もが笑顔だ。
「聞いてねえぞ…」と呟き、ニヤリと笑って蝋燭の火を吹き消したハリーの満面の笑顔。
「最後にもう1曲やるぜ」
その曲は30年前にも演奏された忘れられない曲の一つだった…。

ハリーには、円熟とか老成なんて言葉は似合わないと思っている。

これまで沢山の経験と成長を重ねた上、更に進化し続ける貴方の姿は、何より問答無用の格好良さ。
そして、時折見せてくれる優しいはにかむ笑顔。

ここに書き留めるのは、届かぬラブレターみたいで少し恥ずかしい気もするけれど、現在も貴方は最高に素敵なロックンローラーだと思っている!

その夜は、終演後に総勢15人で恵比寿で打ち上げ開催!
スライダーズメンバーを通じて繋がったご縁で出会った沢山の方たちと盛り上がった幸せな時間を与えてもらった。

そんな想いを噛みしめながら、ライブの余韻に浸りながら眠りについた幸せに心から感謝を!!

追伸

後日ハリーから還暦を迎えたコメントがツイッターフェイスブック・インスタグラムから同時ポストされるという嬉しい出来事が!

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https://twitter.com/harry_station/status/1090813099018350592